毒々しく、妖しげな支那海世界がこの秋、お潮井浜に帰ってくる!

新興住宅の中に田園風景が点在する野多目。この町に夜の戸張りが下りるころ、一軒のスーパーの二階、稽古場にその人はいました。劇衆「上海素麺工場」の脳みそとも言われ、劇団の座長であり、脚本、演出、役者など自由自在に変化する怪人・支那海東さんをインタビューしました。

支那海 東(しなかい あずま)さん

●プロデビュー

昭和四十年代、日本中が学生運動に揺れる中、京都で学生生活を送っていた十八歳の支那海東さんは、国家や社会の理不尽さに疑問を感じて学生運動に身を投じていきました。しかし、運動に明け暮れる息子に業を煮やした実家から仕送りを絶たれ、困窮の末にたどり着いた所は、裏町のショー劇場でした。「ここで照明や音響の仕事をしました。たまたま舞台に上がって準備をしていたところを見た状況劇場(赤テント)の座長唐十郎さんに声をかけられ参加。巡業先のキャバレーで全身に金粉を塗って出たショータイム! いきなりのプロデビューでした」

●支那海世界(しなかいわーるど)

舞台の恐怖、恥ずかしさを、このとき全身で感じたと支那海さんは言います。
アングラ演劇の全盛期、体の中に潜む怪しげな魔物たちがうごめき始めました。演劇や舞台など、未経験の支那海さんは状況劇場の舞台の上で、自分の未知なる部分を追求し「支那海世界」を創り上げていきます。

●テント芝居へのこだわり

一九七八年、福岡に舞い戻り劇衆「上海素麺工場」を旗揚げ。一貫してテントでの公演にこだわり続けています。通常の劇場やホールでは使えない水や火、火薬、クレーンなど、重機を使った大掛かりな舞台が観客を魅了します。
「舞台が終わればそこには筥崎宮のお潮井浜があるだけ、まるで蜃気楼のよう。本当にここで芝居があったのかさえ定かではない。私にとってテント芝居は一夜限りの『夢の国家、観客は共犯者』」そう語る支那海さん。
「『支那海さんの頭の中って、どうなってるの?』ってよく言われますが、劇衆「上海素麺工場」の芝居は、日本の歴史的事件や国家社会への鬱積が、美しい音符の結晶となって舞台に爆破する。私の芝居を頭で考えてたら置いてかれますよ」と笑顔。

ひっそりと佇む劇衆の稽古場の入り口
写真:ひっそりと佇む劇衆の稽古場の入り口

●稽古場が常設劇場へ

「そんな『上海素麺工場』も、野多目に稽古場を構えて十五年。今のところ追い出されそうもないので(笑)、昨年稽古場から常設劇場に作り変えました。これからはライブや映画の上映会などを定期的に開き、地域との接点を作ろうと思っています。劇団の若手にはテント芝居本番の緊張をここで体感、蓄積してほしい」と瞳を輝かせます。福岡市南区のこの町からさらなる強烈な刺激を放ってくれそうです。

●今秋公演『セカンド・ハネムーン』

この秋、筥崎宮お潮井浜で『セカンド・ハネムーン』が公演されます。数年前、肝臓を患ったベッドの上で、支那海さんが死の恐怖と生への執着心を綴った渾身の脚本です。
「人間本来の動物的本能? とでもいいますか。体にズキンとくる奇奇怪怪の世界。夢と現実の間で妖しく、美しく揺らめく舞台に観客はゾクゾクしますよ」と支那海さんは少年のようにニヤリと笑います。
上海素麺工場では、ただいま、役者・スタッフを募集中です。「私たちと一緒に暴れましょう。退屈なんかさせません」

劇衆「上海素麺工場」の若手たちと
写真:劇衆「上海素麺工場」の若手たちと

『セカンド・ハネムーン』

戯作/支那海東
【日時】10月23日(金)・24日(土)・25日(日) 午後7時開演
【会場】筥崎宮お潮井浜(福岡市東区箱崎1-22-1)
【入場料】前売り券3500円
【問い合わせ】モダンラヴァーズ
電話番号070-5693-2221
http://www2.odn.ne.jp/~aaq65470/
劇衆上海素麺工場 稽古場・常設劇場/
福岡市南区野多目4-2-1 スーパーエース2階
電話番号092-565-8255


PROFILE
支那海 東(しなかい あずま) 1953年、福岡県大牟田市生まれ。
1971—1976年、唐十郎さん率いる劇団状況劇場(赤テント)に参加。
1978年、劇衆「上海素麺工場」旗揚げ。一貫してテント芝居にこだわり続け、多くのファンを魅了する。

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